この作品について
三崎こはるは、藤色のカーディガンを羽織ったまま、
その日の午後をまるごと抱きしめるような静けさの中に座っていた。
彼女の後ろに垂れ下がる白いカーテンは、
ゆっくりと呼吸するみたいに揺れていて、
その一方で、こはる自身はまるで時間の流れから一歩だけ外れた場所に
そっと腰かけているように見えた。
こはるは透明なマウスオープナーを口にかけると、
ぱっと世界が少し明るくなるような、不思議な笑顔になった。
笑顔というより、笑顔が拡張して、
別の次元にまで開かれたみたいな表情だった。
もちろん本人はそんなこと気にしていない。
むしろ、こはるは昔から、人の視線がどう向けられようと
自分の心の温度を変えない種類の人だった。
装置に引き伸ばされた唇の向こうで、
雪解けの川みたいに白く整った歯並びが、
午後の光を受けて柔らかく輝いていた。
彼女は両手でオープナーを軽く押さえ、
そのまま少しだけ首を傾ける。
まるで“これはこれで面白いでしょう?”と
僕に問いかけているみたいだった。
こはるのまわりには、
街の喧騒も、誰かの急ぎ足も、
あるいはテーブルの下で眠る猫の気配さえも近づいてこない。
彼女が微笑むだけで、部屋は一瞬だけ、
気温が一度あがるような気がした。
たぶん、こはるはそういう人なんだ。
世界のどこかにある、小さな春先の空気を身体の中に持っていて、
必要な時にそれを静かに取り出してくる人。
その淡い藤色の午後、
僕はそんなこはるの笑顔を見ながら、
なぜだか理由もなく少しだけ救われた気がした。
・本編にモザイクはありません。
・当作品は全て高性能AIによるCG動画です。
・実在する人物・場所とは一切関係ありません。
■収録時間
10秒(音声あり)
mp4